屈原「九章 抽思(ちうし)」(『楚辭』より)(抄) (藤野岩友)

心 鬱鬱として憂思し、
獨り永歎して傷みを増す。
思 蹇産として釋けず、
曼として夜の方に長きに遭ふ。


こころ うつうつとしていうしし、
ひとりえいたんしていたみをます。
おもひ けんさんとしてとけず、
まんとしてよのまさにながきにあふ。


心鬱鬱之憂思兮
獨永歎乎増傷
思蹇産之不釋兮
曼遭夜之方長


心はふさがり憂いつつ思い、ひとりいつまでも嘆いて悲しみを増す。思いは乱れもつれて解けず、ちょうど秋の夜長にあい、つくづく長いのを感ずる。