屈原「九章 哀郢(あいえい)」(『楚辭』より)(抄) (藤野岩友)
心 怡しまざること長久にして、
憂ひと憂ひと其れ相接す。
こころたのしまざることちゃうきうにして、
うれひとうれひとそれあひせっす。
心不怡之長久兮
憂與憂其相接
わたくしの心の楽しまないことは、まことに久しく、憂いと憂いとが絶え間なく続く。
慘として鬱鬱として通ぜず、
蹇、侘傺して慼を含む。
さんとしてうつうつとしてつうぜず、
ああ、たていしてうれひをふくむ。
慘鬱鬱而不通兮
蹇侘傺而含慼
心はいたみふさがり、晴れることもなく、ああ、しょんぼりと立ち止まって憂いを内にこめている。