屈原「九章 渉江(せふかう)」(『楚辭』より)(抄) (藤野岩友)

前世を與りて皆然り、
吾又何ぞ今の人を怨まん。
余將に道を董して豫せざらんとす。
固より將に重ねて昏くして身を終へんとす。


ぜんせいをこぞりてみなしかり、
われまたなんぞいまのひとをうらまん。
われまさにみちをただしてよせざらんとす。
もとよりまさにかさねてくらくしてみをおへんとす。


與前世而皆然兮
吾又何怨乎今之人
余將董道而豫兮
固將重昏而終身


昔も皆そうなのであるから、わたくしは又なんで今の人を怨んだりしようか。わたくしはためらわずに道を正して行こうと思う。もとより重ねて暗い境遇に陥り光明を見ずに身を終えることであろう。