2015-08-24から1日間の記事一覧

蓮實重彦「〈美〉について 谷崎潤一郎『疎開日記』から」(小林康夫/船曳建夫 編『知のモラル』所収)

実際,いつもとは何かがわずかに違っているという差異への敏感さを欠いている知性は,およそ知性の名には値しません.核実験を「美しい」スペクタクルとして鑑賞しうるものに欠けているのは,まさに変化を察知しうる知性なのです.そうした知性ならざる知性…

蓮實重彦「〈美〉について 谷崎潤一郎『疎開日記』から」(小林康夫/船曳建夫 編『知のモラル』所収)

作品の創造とは,まさしく知性の行使にほかならず,感性のほしいままな飛躍などではありえないからです.愚鈍さとは,「独自性」に徹することで「一般性」=「特殊性」という秩序を超えて,「普遍性」としてある真の知性に出会うための試練にほかなりません…

蓮實重彦「〈美〉について 谷崎潤一郎『疎開日記』から」(小林康夫/船曳建夫 編『知のモラル』所収)

では,「戦争とは斯くも美しきものかな」という断言は,「戦争は悲惨だ」とつぶやくほかはない核時代の状況と,どのようにかかわるのでしょうか.ここでひとこと付言しておくなら,広島の上空に核爆弾が炸裂してからも,戦争が野蛮であることを人類がこぞっ…

蓮實重彦「〈美〉について 谷崎潤一郎『疎開日記』から」(小林康夫/船曳建夫 編『知のモラル』所収)

20世紀は,1914年に欧州で始まった第1次世界大戦から,つい最近の湾岸戦争や旧ユーゴスラビアの内戦にいたるまで,人類が戦争の野蛮さや悲惨さをいやというほど思い知らされた時代です.にもかかわらず,20世紀の真の不幸は,人類が戦争の「醜さ」を知った時…