2015-08-18から1日間の記事一覧

夏目房之助『マンガはなぜ面白いのか その表現と文法』(NHK人間大学 1996 7月〜9月期)

そういういいかたをすれば、言葉は時間的なもので、絵は空間的なものです。欧米の言葉はもともと音で、音をあらわす文字によって成り立っているといわれます。ですから言葉はほとんど脳の聴覚処理部門で受けとられる。ところが日本の場合、かなという聴覚的…

夏目房之助『マンガはなぜ面白いのか その表現と文法』(NHK人間大学 1996 7月〜9月期)

時間分節の約束は、日本の本ではまず右から左へと読み進むことにあります。読み進むコマの順番のルールがまだ完全に定まっていなかった頃は、マンガのコマに一つ一つナンバーがついていました。このナンバーが廃止されるのは、「週刊少年マガジン」で六九年…

夏目房之助『マンガはなぜ面白いのか その表現と文法』(NHK人間大学 1996 7月〜9月期)

ページをめくるという、我々にとって当り前になっているマンガの読みかたは、じつは本という媒体に物理的に決められたものです。新聞マンガなどは、ページをめくるという読みかたをもっていません。でも、現在の日本のマンガではページをめくるという読みか…

夏目房之助『マンガはなぜ面白いのか その表現と文法』(NHK人間大学 1996 7月〜9月期)

そして、何よりもドラえもんそのものの造形が、じつに安定した丸の集合によってできています。ドラえもんの絵から丸い線とそれ以外の線を抜き出して並べると、いかに彼が丸にこだわって描かれているかがわかります。ドラえもんがじつは耳のついた猫型ロボッ…

ねじめ正一『言葉の力・詩の力』(NHK人間講座 2001 4月〜5月期

つまり、吉岡さんはコトバだけでひとつの世界をつくり上げてしまったわけです。この詩はコトバだけで出来ています。「詩なんだもの、そんなの当たり前でしょ」というのは間違いです。たいていの詩はコトバだけではなく、詩人の内面だの感情だの思想だのが入…

ねじめ正一『言葉の力・詩の力』(NHK人間講座 2001 4月〜5月期

言霊とはコトバそのものから立ちのぼってくるコトバのたましいのことですが、その言霊には意味とか伝達機能とかはないのです。そういうものとは無縁なところに言霊はあります。言葉遊びとは、言い換えれば言霊と遊ぶことです。

ねじめ正一『言葉の力・詩の力』(NHK人間講座 2001 4月〜5月期

男詩人は詩のために生きる(ときには死ぬ)ことはあっても、詩がなくては生きて行けないということはありません。詩に命をかけることはあっても、詩を書くことが生きることだとは言い切れません。男詩人は詩と自分との間にもう少し距離を取ることができます…

ねじめ正一『言葉の力・詩の力』(NHK人間講座 2001 4月〜5月期)

以前、谷川さんと喫茶店で話をしているときに、谷川さんは私にこんなことを言いました。 「詩って、まだ白紙じゃない。ねじめさんはその白紙のほんの一部分に書き込んだけど、まだまだ白紙のところはいっぱいある。それを考えると、詩の状況が行き詰まってい…