2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(原卓也 訳)

「お前は大きな悲しみを見ることだろうが、その悲しみの中で幸せになれるだろう。悲しみのうちに幸せを求めよ――これがお前への遺言だ。働きなさい、倦(う)むことなく働くのだよ。今日以後、わたしのこの言葉を肝に銘じておくといい」

ドストエフスキー『罪と罰』(工藤精一郎 訳)

「その態度が、けたくそわるいというものですよ! あなたは自分を信じられなくなってしまったから、わたしが下手な嬉(うれ)しがらせを言ったみたいに、考えるんです。あなたはこれまでどれだけ生活して来ました? どれだけのものごとを理解しています? 一つ…

ドストエフスキー『悪霊』(江川卓 訳)

「ほんとうらしく思わせるには、できるだけ曖昧に書く必要があるんです、つまり、これですよ、こんなふうにちらとほのめかすんです。真実というやつは、端のほうをちらと垣間見せて、人の気持をそそるのが手なんですよ。人間というやつは、他人に欺かれるよ…

ドストエフスキー『白痴』(木村浩 訳)

彼は全身、頭のてっぺんから足の爪先(つまさき)まで、独創的な人間になろうという希望に燃えてはいるが、やはり《ずっと聡明な》平凡な人の種類に属していた。しかし、この種類に属する人びとは前にも述べたように、前者よりもずっと不幸なのである。なぜな…

ドストエフスキー『未成年』(米川正夫 訳)

こういうわけで、もし人間を見分けたい、人間の魂を知りたいと思ったら、その当人の沈黙している様子や、しゃべったり、泣いたりしている具合や、あるいはさらに進んで、高潔なる思想に胸を躍らせている状態に注意するよりも、むしろ笑っているところを見た…

ウィリアム・フォークナー『響きと怒り』(高橋正雄 訳)

とにかく、ぼくにとっては存在しなくなる。ふたたび。過去よりも悲しい言葉になる。ふたたび。なによりも悲しい言葉になる。ふたたびというのは。

ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!』(高橋正雄 訳)

そうだ と今彼は考えた ぼくは余りに多く、余りに長いあいだ聞きすぎた

ウィリアム・フォークナー『八月の光』(加島祥造 訳)

「神だって結婚というものを造られた時にはそんなつもりではなかった。造った? いや、結婚を造ったのは女だ」

ディケンズ『大いなる遺産』(山西英一 訳)

それゆえわたしは、いったいどうして昔彼を無能な人間だなんて考えたのだろうと、なんどもふしぎに思った。が、ある日、たぶんその無能さは彼のうちにあったのではなく、わたしのうちにあったのだと反省してみて、いっさいが氷解した。

J.D.サリンジャー「ゾーイー」(野崎孝 訳)

「でもいちばんいけないことはね、自分で自分がどんなに退屈な存在かってことを知ってることなのよ。わたしがみんなの気持を暗くしてる、感情を傷つけてさえいるってことが、自分でちゃんと分かってるのよ――でもやめることができなかった! 突っかかるのをや…

トルーマン・カポーティ『遠い声 遠い部屋』(河野一郎 訳)

昼間を逃れるのはたやすいが、夜は避けられない、そして夢は巨大な檻(おり)なんだ。

フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』(野崎孝 訳)

ぼくがまだ年若く、いまよりもっと傷つきやすい心を持っていた時分に、父がある忠告を与えてくれたけれど、爾来ぼくは、その忠告を、心の中でくりかえし反芻してきた。 「ひとを批判したいような気持が起きた場合にはだな」と、父は言うのである「この世の中…