森鷗外「建築師」

森。僕だつて平生勉強して、自分丈(だけ)の家は新築してゐます。塔も立ててある。その塔に足場も掛けてある。併(しか)し自分でそれへ登らうとは思はない。塔の尖(さき)へのあこがれはあつても、自分で登らうといふ決心はない。