2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

G・K・チェスタトン「ジョン・ブルノワの珍犯罪」(中村保男 訳)

人間というものは、いつも時と場合にぴったり合わないことにばかりに出くわしているので、つまりは不調和や不釣合いの雑音に慣れ、いわば不協和音の曲を子守歌にして眠ってしまうわけである。ところが、なにか、いかにもしっくりしたことが起こると、たちま…

G・K・チェスタトン「ペンドラゴン一族の滅亡」(中村保男 訳)

「だが、遠い昔の伝説なんて昔の彫刻から思いついてこしらえあげたものが多いのを、あんたはご存じないのかな」

G・K・チェスタトン「紫の鬘」(中村保男 訳)

ジャーナリストの習慣として、話の結びをその冒頭にもって来て、それを見出しと称するのがつねである。また、《ジョーンズ卿死す》というニュースを、そもそもジョーンズ卿とやらが生きていたことも知らなかった人たちに伝えるのがジャーナリズムというもの…

G・K・チェスタトン「シーザーの頭」(中村保男 訳)

「なにが不思議だと言って、あなたほど不思議なものはありませんわ」と娘はさじを投げた格好で言った。「でも、あなたの不思議さのなかにはなにか中心がありそうだわ」 「なによりもおそろしいのは、中心のない迷路です。だからこそ無神論者は夜ごと悪夢にう…

G・K・チェスタトン「器械のあやまち」(中村保男 訳)

「あんたはいつも忘れておいでですよ」と神父は述べた――「その信頼にたる器械を動かすのは、いつも信頼できぬ器械だということをね」 「と言うと?」 「つまり人間ですよ。わたしの知っているかぎり、人間こそいちばん信頼できぬ器械なんです」

G・K・チェスタトン「ヒルシュ博士の決闘」(中村保男 訳)

「三というのは神秘的な数だ。三という数は物事の結末をつける数だ」

G・K・チェスタトン「グラス氏の失踪」(中村保男 訳)

なにか大きな理論にかぶれている人は、えてしてそれをつまらないものにまで適用しがちなものだ。

G・K・チェスタトン「折れた剣」(中村保男 訳)

「ともかく、こういう悪は、その性質上、つぎからつぎへと地獄の戸をあけてしだいしだいにせまい部屋に入って行くものなんだよ。犯罪がよからぬものであるという真の理由は、人間がしだいに奔放になるからでなく、ただただ卑しくなるばかりだからさ」

G・K・チェスタトン「折れた剣」(中村保男 訳)

「賢い人はどこに樹の葉を隠すか? 森のなかだろう。だが、森がなかった場合にはどうするかな?」 「さて、さて」とフランボウはいらだたしげにさけんだ――「どうするんでしょうかね?」 「葉を隠すために、森を生やすだろうよ」とあいまいな声で神父が言う――…

G・K・チェスタトン「折れた剣」(中村保男 訳)

「たったひとつの言葉を捜しているんだよ」とブラウン神父。「どこにも存在せぬことばをな」

G・K・チェスタトン「神の鉄槌」(中村保男 訳)

「兄さんの道楽は神を冒瀆することでしょう」心のなかの唯一の生きた部分を刺された宗教家はやり返した。「でも、たとえ神を怖れないとしても、人を怖れなければならない理由は大ありなんです」

G・K・チェスタトン「神の鉄槌」(中村保男 訳)

伝統を保存するのは、だいたい貧乏人なのであって、貴族は伝統に生きずして流行に生きる。

G・K・チェスタトン「サラディン公の罪」(中村保男 訳)

「破滅の宿命というものを信じますか」落ち着きのないサラディン公爵が不意に訊いた。 「いいや」と客人は答えた。「最後の審判の日なら信じます」

G・K・チェスタトン「狂った形」(中村保男 訳)

「奇蹟は質こそ神秘的だが、その起りかたは単純だ」

G・K・チェスタトン「狂った形」(中村保男 訳)

「現代人の頭は、いつでも、二つの異った考えを混同している――つまり、ふしぎなるものという意味での神秘と、複雑なるものという意味での神秘とをいっしょくたにしているのだな。そこに、現代人が奇蹟を信じえぬ理由の半分がある。奇蹟は驚くべきものではあ…

G・K・チェスタトン「狂った形」(中村保男 訳)

「あなたがたは、肉体ばかりか精神のことも多少は知っておく必要があるでしょう」と神父は答えた――「わたしらのほうも、精神ばかりか肉体のことも多少は知っておかねばならぬのです」

G・K・チェスタトン「イズレイル・ガウの誉れ」(中村保男 訳)

「どんどんやってください」神父はいたって穏やかに言った。「真相を見つけようとしているだけのことじゃありませんか。なにをこわがっているんです」 「真相が見つかるのがこわい」とフランボウ。

G・K・チェスタトン「イズレイル・ガウの誉れ」(中村保男 訳)

「心理学とは、いかれてしまうことなり」

G・K・チェスタトン「見えない男」(中村保男 訳)

「こんなことに気づいたことはありませんかな? つまり、他人というものは、こちらの言ったことに答えようとしないということに? 人はこちらの言ったことの意味にたいして――もしくは人が相手はこういうつもりなんだろうと考えたその意味に対して――答えるの…

G・K・チェスタトン「奇妙な足音」(中村保男 訳)

「だが、神々しい作品にしろ、悪魔的な作品にしろ、芸術作品と名のつくものには、かならず一つの特長がある――いかに仕あがりが複雑に見えようと、中心はあくまで単純であるというのがそれです」

G・K・チェスタトン「奇妙な足音」(中村保男 訳)

神父は、跳躍するために走る人間を見たことがある。すべるために駈ける人も見た覚えがある。が、いったい、歩くために走るというのはどうしたわけなのか? あるいは、走るために歩くのはなんとしたことであろうか?

G・K・チェスタトン「青い十字架」(中村保男 訳)

「犯人は創造的な芸術家だが、探偵は批評家にすぎぬのさ」

G・K・チェスタトン「青い十字架」(中村保男 訳)

奇蹟というものの一番信じがたい点は、それが現に起るということだ。

サルトル「一指導者の幼年時代」(中村真一郎 訳)

遅かれ早かれ(それもどっちでもいいことだ)。

サルトル「一指導者の幼年時代」(中村真一郎 訳)

「――きみ、人は自分の望むことをすぐには信じられないさ。実践が大事だね」

サルトル「壁」(伊吹武彦 訳)

トムも孤独だがわたしとおなじように孤独ではない。

サルトル「壁」(伊吹武彦 訳)

それにしても、死んでいくのはこのわたしだ。

サルトル「壁」(伊吹武彦 訳)

「おれにはわからないことがおころうとしているんだ」

サルトル「壁」(伊吹武彦 訳)

わたしは何か途方もなく重いものに圧(お)しつぶされたような感じがした。死の思いでもなく恐怖でもない。名のないものだった。

サルトル「壁」(伊吹武彦 訳)

ひとりぼっちだとしまいには気持がいらいらする。