2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「小弁(せうはん)」(「『詩經』 小雅 節南山之什(せつなんざんのじふ)」より)(抄) (高田眞治)

弁たる彼の鸒斯 歸り飛んで提提たり 民 穀からざる莫し 我 獨り于に罹ふ 何ぞ天に辜せらるる 我が罪伊れ何ぞ 心の憂ふる 云に之を如何せん はんたるかのよし かへりとんでししたり たみ よからざるなし われ ひとりここにうれふ なんぞてんにつみせらるる わ…

屈原「九章 渉江(せふかう)」(『楚辭』より)(抄) (藤野岩友)

陰陽は位を易え、 時は當らず。 信を懷いて侘傺し、 忽として吾將に行らんとす。 いんやうはくらゐをかえ、 ときはあたらず。 しんをいだいてたていし、 こつとしてわれまさにさらんとす。 陰陽易位 時不當兮 懷信侘傺 忽乎吾將行兮 陰と陽とは位置を変え、…

「盥盤の銘(かんばんのめい;盥盤銘)」(「『古詩源』 古逸」より)(抄) (内田泉之助)

其の人に溺れんよりは、寧ろ淵に溺れよ。 淵に溺るるは、猶ほ游ぐべきも、 人に溺るるは、救ふべからざるなり。 そのひとにおぼれんよりは、むしろふちにおぼれよ。 ふちにおぼるるは、なほおよぐべきも、 ひとにおぼるるは、すくふべからざるなり。 與其溺…

白樂天「病中多雨、寒食に逢ふ(びゃうちゅうたう、かんしょくにあふ;病中多雨逢寒食)」(抄) (田中克己)

薄暮 何人か觱篥を吹き 新晴 幾處か鞦韆を縛す。 綵繩 芳樹 長へに舊のごときも ただこれ年年 少年を換ふ。 はくぼ なんぴとかひちりきをふき しんせい いくしょかしうせんをばくす。 さいじょう はうじゅ とこしなへにもとのごときも ただこれねんねん せう…

杜甫「垂老の別れ(すゐらうのわかれ;垂老別)」(抄) (目加田誠)

人生 離合有り 豈に衰盛の端を擇ばんや 昔少壯なりし日を憶ひ 遲廻して竟に長嘆す じんせい りがふあり あにすゐせいのたんをえらばんや むかしせうさうなりしひをおもひ ちくゎいしてつひにちゃうたんす 人生有離合 豈擇衰盛端 憶昔少壯日 遲廻竟長嘆 人生…

李白「山中に幽人と對酌す(さんちゅうにいうじんとたいしゃくす;山中與幽人對酌)」(全) (青木正兒)

兩人對酌 山花開く 一盃一盃 復た一盃。 我醉うて眠らんと欲す卿且く去れ 明朝 意有らば琴を抱いて來れ。 りゃうにんたいしゃく さんくゎひらく いっぱいいっぱい またいっぱい。 われゑうてねむらんとほっすけいしばらくされ みゃうてう いあらばことをいだ…

「蓼莪(りくが)」(「『詩經』 小雅 谷風之什(こくふうのじふ) 」より)(抄) (高田眞治)

父や我を生み 母や我を鞠ふ 我を拊し我を畜ひ 我を長じ我を育し 我を顧み我を復し 出入我を腹く 之が徳に報いんと欲すれども 昊天極り罔し ちちやわれをうみ ははやわれをやしなふ われをぶしわれをやしなひ われをちゃうじわれをいくし われをかへりみわれ…

屈原「九章 渉江(せふかう)」(『楚辭』より)(抄) (藤野岩友)

前世を與りて皆然り、 吾又何ぞ今の人を怨まん。 余將に道を董して豫せざらんとす。 固より將に重ねて昏くして身を終へんとす。 ぜんせいをこぞりてみなしかり、 われまたなんぞいまのひとをうらまん。 われまさにみちをただしてよせざらんとす。 もとよりま…

陶潛「癸卯十二月中の作、從弟敬遠に與ふ(きばうじふにぐゎつなかごろのさく、じゅうていけいゑんにあたふ;癸卯十二月中作與從弟敬遠)」(抄) (星川清孝)

意を寄す一言の外、玆の契誰か能く別たん。 いをよすいちごんのほか、このけいたれかよくわかたん。 寄意一言外 玆契誰能別 この一言の外に寄せた私の深い心、それをわり符を合わせたように理解してくれる人、この心の一方のわり符を別ち持ち得る人は誰であ…

白樂天「府西の池(ふせいのいけ;府西池)」(全) (田中克己)

柳 氣力なくして枝まづ動き 池に波の文あり冰ことごとく開く。 今日 知らず誰か計會せる 春風 春水 一時に來る。 やなぎ きりょくなくしてえだまづうごき いけになみのもんありこほりことごとくひらく。 こんにち しらずたれかけいくゎいせる しゅんぷう し…

杜甫「江頭に哀しむ(かうとうにかなしむ;哀江頭)」(抄) (目加田誠)

人生情有り 涙臆を沾ほす 江水江花 豈終に極らんや じんせいじゃうあり なみだおくをうるほす かうすゐかうくゎ あにつひにきはまらんや 人生有情涙沾臆 江水江花豈終極 人と生まれて、情というものをもつ以上、私はどうしても涙に胸をうるおさずにはいられ…

李白「酒を把って月に問ふ(さけをとってつきにとふ;把酒問月)」(抄) (青木正兒)

青天 月有って來幾時ぞ 我 今 盃を停めて一たび之を問ふ。 人が明月を攀づるは得可からず 月行 却て人と相隨ふ。 せいてん つきあってこのかたいくときぞ われ いま はいをとどめてひとたびこれをとふ。 ひとがめいげつをよづるはうべからず げっかう かへっ…