2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

斎藤環『OK? ひきこもりOK!』

私たちはみな、善意から過ちをおかす可能性を持っています。一面的な善意、正しさ、有効性といったものが、いかに視野狭窄をもたらすか。臨床場面でもよく経験することですが、治療者自身が「これが絶対に正しい」と考えはじめたら、むしろ要注意信号です。…

斎藤環『OK? ひきこもりOK!』

すでに精神分析がヒステリーなどについて明らかにしていることですが、人間は、あるいは、社会は、病理的な部分を抱えることで一種の均衡を保っていると考えることができます。極端ですがわかりやすいイメージでいうなら、社会における病理の総量は常に一定…

斎藤環『OK? ひきこもりOK!』(「対談 春日武彦 ひきこもり系の精神分析」)

斎藤――対人恐怖の人って、本当は他人のことを怖がっていないんじゃないかと思うときがあるんです。どこか他人も自分と思い込んでいる。他人を本当に他者だと思えたら、むしろ対人恐怖にはならないんじゃないでしょうか。彼らは、相手が自分についてこう思っ…

斎藤環『OK? ひきこもりOK!』(「対談 春日武彦 ひきこもり系の精神分析」)

斎藤――何か好きになるにしても、男の場合、好きになったものに変に義理立てしちゃうところがある。一度ファンになった作家やバンドの作品は、本当は気に入らなくても、とりあえず義理があるからと思って買ったり、気に入らない自分をうしろめたく感じたりす…

斎藤環『OK? ひきこもりOK!』(「対談 春日武彦 ひきこもり系の精神分析」)

斎藤――一般に男は、かたちにこだわるというか、平たく言うと完全主義なんでしょうけれども、最初に窓枠、つまり観念のモデルをきっちりつくりこんでおかないと動けないところがある。それでとにかくスタートが遅れに遅れて、そのうち遅れることが自己目的化…

斎藤環『OK? ひきこもりOK!』(「対談 宮台真司 流動性・バーチャル・コミュニケーション」

宮台――日本ではあらかじめ前提を共有している人間と戯れているだけなのに、「話せば分かる」とか「みんな仲良し」などと言います。まったくの噓です。そこでの「みんな」とはローカリティに過ぎないのに、そのことが隠されている。それはおかしいのです。 前…

斎藤環『OK? ひきこもりOK!』(「対談 宮台真司 学校を超えて」)

斎藤――結局、性の問題が大きいんです。ひきこもりの人というのは、思春期における性的弱者なわけです。いかにその人が社会参加するかに対して、性がものすごく大きな鍵を握っています。実際、性関係を確立した時点で立ち直ったりします。 みんな発想が仕事一…

斎藤環『OK? ひきこもりOK!』(「対談 上野千鶴子 から何が見えるか」)

上野――子どもの側に成熟拒否があるのと同じように、親の側にも子どもの自立拒否がありますね。そういう親子関係を「共依存」と呼んでもいいですか。 斎藤――ええ、ほとんど典型的な共依存だと思います。

高良武久「森田正馬『対人恐怖の治し方』解説」

対人恐怖症は内向的態度の人に起こりやすいものである。内向的な人は、進んで自分の能力を発揮することよりも、いつも自己防衛の方に心を使っている。細心、要慎深いこと、真面目なことなどは長所ではあるが、自己中心的に自分の心身のことばかりに注意を向…

高良武久「森田正馬『対人恐怖の治し方』解説」

対人恐怖の人は卑屈な気分で自己中心的に物事を解釈しやすいものである。電車に乗っても、あるいは通りを歩いていても、周囲の人々が自分を見ている、しかも軽蔑の眼で見ていると感ずるものがあり、人が笑っても自分を馬鹿にしているとか、眼をちょっとしか…

高良武久「森田正馬『対人恐怖の治し方』解説」

捉われは無理な完全欲から起こりやすい。常に最上のコンディションを持っていなければならぬものと心得るから、常に何か心身の不都合なところを問題にして、それに捉われる。勉強する時は頭脳がいつも明瞭で、雑念もなく、倦怠感もない状態でなければならぬ…

森田正馬『対人恐怖の治し方』

逃げれば逃げるほど、静養すればするほど、悪くなります。

森田正馬『対人恐怖の治し方』

神経質は、自己中心のために、人の迷惑を考えることが少しもできなくなる。

森田正馬『対人恐怖の治し方』

「諦めがよい」というような人が、世の中にあるように思われるのは、それははじめから欲がなく、苦労は少しでもいやな人で、ただ、濡手に粟で儲かればよいけれども、そうでなければいやという意志薄弱性の無頼漢である。死は恐ろしいのが人情であるが、面白…

森田正馬『対人恐怖の治し方』

およそ対人恐怖患者は、自ら気の小さい恥かしがりやであると称して、しかも無遠慮で、人の迷惑を意としないという特徴がある。 ※斜体は出典では傍点

森田正馬『対人恐怖の治し方』

これが全快です。何ものをも得なかったのが大きな賜であります。もし君が予期した通り、人前で顔が赤くならないようになったならば、それは無恥堕落の人となり終りましょう。もし君がある芸術心を満足したならば、それは玩具の人形のようになったでもありま…

森田正馬『対人恐怖の治し方』

……死にたい、と思う心は、生の欲の激甚な結果である。自己身心の安楽を得るために神を信ずるものは、信仰に似て、邪欲である。人生を、理屈や思想で解決しようとするのは誤解である。これを解決するものは事実である。食欲がなければ生命はないが、食欲にあ…

森田正馬『対人恐怖の治し方』

われわれが死を恐れ、病を厭うのは、生の欲望を全うせんがためである。死ぬ心配さえなければ生きていなくともよい、というはずはない。生きたくないものが、死を恐れるわけもない。しかるに神経質の気質は、死を恐れることに執着し、没頭して生の欲望を失念…

平木典子『カウンセリングの話』

共感的理解をするためには、よく聴き、よく看ることが大切である。相手について理解するのではなく、相手を理解するには、心からわかろうとすることが必要である。それは、きわめて積極的かつ能動的な態度であって、単に「黙って見ている」こととは異なる。…

平木典子『カウンセリングの話』

「共感性」というのは、(中略)英語ではエンパシィ(empathy)といい、類似語のシンパシィ(sympathy)と区別される。シンパシィは、「同感」とか「同情」と訳される言葉で、相手の心情や感情に取り込まれて同じ気持ちになることをいう。ところが、エンパシィは…

平木典子『カウンセリングの話』

こう考えてくると、カウンセラーはなんでもわかっている必要はないということも、理解できるであろう。むしろ、わかっている振りをしたりすることが、カウンセリングの中では最も障害になる。 従って、カウンセラーは、「この人のことを、ここまで、このよう…

平木典子『カウンセリングの話』

幸か不幸か、心理学という分野は戦争によって発達することが多い。国の命運を賭けて国同士が戦うには人間を有効に使わなければならない。そこで人間の研究が盛んになり、最も有効に人間を活用するために人間を測定するといった技術も発達するわけである。例…

渡辺利夫『神経症の時代――わが内なる森田正馬』

思えば、神経症者とは、今を生きることを放棄して、過去の改悛と未来への不安におののき、それにとらわれてしまった人たちではないのか。症者の多くは、もう終わってしまった過去に対して、あのとき自分は赤面したから友人から変に思われたのではないか、友…

渡辺利夫『神経症の時代――わが内なる森田正馬』

人間の心身機能の発揚は、子供にあっては遊びであり、長じるにともなって仕事に移る。人間はこの世に生を受けて以来、厳しい現実のなかでその生を営々とつむいできた。それを可能ならしめたものは、仕事である。仕事によって環境を自己の生存維持のために変…

渡辺利夫『神経症の時代――わが内なる森田正馬』

神経質な人びとが自己をとかく内省的、批判的にみつめるのは、彼らが向上発展欲において強いからである。向上発展を強く求めるがゆえに、それを妨げる可能性のある身体的、精神的な病覚に関心をもたざるをえず、実際には異常ではないにもかかわらず、これに…

オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』(高見幸郎、金沢泰子 訳)

われわれは、めいめい今日までの歴史、語るべき過去というものをもっていて、連続するそれらがその人の人生だということになる。われわれは「物語」をつくっては、それを生きているのだ。物語こそわれわれであり、そこからわれわれ自身のアイデンティティが…

石川元『隠蔽された障害 マンガ家・山田花子と非言語性LD』

さまざまな能力への「平等」のお仕着せこそ、大きな「差別」なのです。

石川元『隠蔽された障害 マンガ家・山田花子と非言語性LD』

一般に、話し手の言うことが全部相手に伝わるのではない。メッセージの移動に際して必ず途中で脱落するものがある。そのため、少しは消えても意味の伝達に支障のないようにするための防禦体制が必要なことから「冗長」の存在価値がある。伝達の場により数も…

布施豊正『自殺と文化』

そして、日本語に「コミュニケーション」に相当する言葉がない、という事実は重要である。日本人は以心伝心という無言のコミュニケーションに依存しすぎるため、言葉によるコミュニケーションの発達は遅れてきた。「死をもってお詫びする」という自殺が日本…

布施豊正『自殺と文化』

戦時中はどの国でも自殺率は減少する。この現象は、フランスの自殺学者デュルケームの指摘したとおりで、第一次大戦、第二次大戦でもまったく同じ傾向がみられた。注目すべきは、局地的内戦、派閥争い、王位争奪戦などは自殺率に全然影響を与えないのだが、…